Prologではプログラムのほとんどの記述は演算子を用いて記述され、言語全体を通して一貫している。
例えば、以下のようなリストの長さを返す述語my_lengthがあるとする。
my_length([],0).
my_length([_|Rest],Cnt):- my_length(Rest,Cnt0),Cnt is Cnt0 + 1.
このとき、下の方のclauseを例とすると、使用されている記号
「:-」 「|」 「,」 「+」 「is」
はどれも組み込みの優先度付き演算子として定義されていて、節全体がPrologの内部表現としては下の図のような木構造で表されている。
ここで、ボディの規則が「,」という演算子で結ばれていることがわかる。
演算子は1項及び2項なので、カンマで3つ以上の規則をつなげた規則a,規則b,規則c のような場合は、演算子の xfy の定義により
‘,’(規則a, ‘,’(規則b,規則c))
というような右方向に入れ子となる木構造として表現される。
Swi-Prologのプロンプトでの実験
6 ?- Test=(a,b,c),Test=..List.
Test = (a, b, c),
List = [',', a, (b, c)].
ここで、abc(prm1,prm2) などの compound term の引数で使われているカンマに関して考えてみると、これは実は演算子ではない。
例えば、少し無理やりですが、以下のプロンプトの実験はマッチング失敗します。
8 ?- abc(','(prm1,prm2)) = abc(prm1,prm2).
false.
しかし右辺のprm1,prm2をさらにカッコでくくるとマッチング成功します。
10 ?- abc(','(prm1,prm2))=abc((prm1,prm2)).
true.
これは(prm1,prm2)とだけ書いた表現が、「カンマ演算子の引数としてprm1、prm2を渡したもの」を表していることを意味している。
そして、[a,b,c,d,e]などのリストで使用されているカンマはそのまま演算子として使用されるのではなく、ドット演算子に変換されます。
プロンプトでの実験
7 ?- [a,b,c]=R,R=..Y.
R = [a, b, c],
Y = ['.', a, [b, c]].
はじめに紹介したmy_lengthの木構造で [_|Rest] の部分が ピリオドに変わっていますが、これもドット演算子で、ドット演算子はPrologのリストを Lisp の car と cdr のように「最初の要素」と「残りのリスト(空リスト含む)」に分けます。
プロンプトでの実験
4 ?- [First|Rest]='.'(First,Rest).
true.
5 ?- [a,b,c,d]='.'(First,Rest).
First = a,
Rest = [b, c, d].
6 ?- [a,b,c,d,e]=','(a,(b,c,d,e)).
false.
上記で分かる通り、Prologでは同じカンマでも「演算子のカンマ」と「演算子でないカンマ(term の引数のカンマ、ドット演算子に変換されるカンマ)」が混在していることになる。
誰かのブログで、Prologの構文をいじれるとしたらterm(prm1,prm2)のカンマをスペースにしたいと書いている人がいて、はじめなぜそうしたいのか意味がわからなかったけど、「演算子ではないカンマは空白にしたい」という意味として考えると、なるほど混乱を避けるためにはその方が良いかもと思うようになった。そうするとリストの要素を分けるカンマも手を付けたほうが良い?
ドット演算子と述語の終わりを意味するピリオドも同じ文字だが全然意味が違い、厳密性を考えるとこれも紛らわしいような気がする。
述語の終わりのピリオドは一体演算子なのかちょっと確認できなかったのですが、多分違うと思います(詳細を知っている方いらっしゃいましたらぜひ教えてください)